Project ANIMA第三弾「キッズ・ゲームアニメ部門」は、DeNAとエブリスタの編集者・プロデューサーによる一次審査、DeNA・創通・文化放送・MBSの四社およびアニメ制作を担う動画工房のプロデューサーによる二次審査、最終審査を経て、この度受賞作品を決定しました。
厳正なる審査の結果、練りこまれた設定と魅力的なキャラクターデザインで、一次審査の段階から一貫して高評価だった品川一さんの『メビウス・ダスト』を大賞に選出しました。同作をアニメ化対象作品原案とし、2022年の放映をめざして制作を開始します。
新宿区霞ヶ丘町は、大げさではなく、日本のスポーツ文化の重心といっても過言ではない街だった。二〇三〇年、この競技場のメッカに、また新たな施設が誕生することになる。巨大な升を思わせる、真四角にして垂直にそそり立つ城壁。この施設を人は、明治神宮装将棋対局場と呼ぶ。
選評将棋×3VR×プロスポーツという、ともすれば破綻寸前の多要素をしっかりまとめあげる筆力のある方です。大人の世界としてゲームルールをしっかり構築しつつ、メインのストーリーをボーイミーツガールに置いているのも好感が持てます。「TCGもの」は多数の応募がありましたが、メインのストーリーラインの弱さが気になるものが多く、結果的に最もTCGになるイメージがついたのは本作でした。
中高生によるラジオ番組の制作・配信競技は、甲子園とならぶ青春の代名詞として全国的に注目を集める花形の部活動である。転校生の少女は再会した幼馴染に「ラジオをやろう」と誘われる。なぜか活動休止状態だった部で、再び流れはじめた親友との時間。しかしその場所を守るためには、全国大会へ勝ち進まなければならない。少女たちは、娯楽放送部として全国大会の舞台である「浜松町」を目指す。
選評「ラジオ番組の制作で全国大会」と一見ワンアイディアもののようにも見えますが、その実読めば読むほどよく設定が練りこまれており、細部のリアリティに唸らされました。キャラクターも活き活きしていて、感情移入しやすいです。実際にラジオプラットフォームをWebサービスとして作って、部活動を普及させたくなるだけの吸引力がある作品です。
おかっぱちゃんは、女子高生紀行写真家・ぽぷりに憧れている小学5年生の女の子。ぽぷりの写メ会で撮った写真に上手く写ることができなかったおかっぱちゃんは、帰り道に美容院へ立ち寄るが、しいたけよりもふかふかなこけしヘアーになってしまう。翌朝、おかっぱちゃんが洗面所で鏡を見ると、しいたけよりもふかふかなこけしヘアーが「ぼぶ!」としゃべった。
選評『寄生獣』『ヴェノム』などに代表される「奇妙な相棒」ものが、小5女子が主人公のドタバタ少女漫画フォーマットに落とされた怪作。今すぐにもLINEスタンプにできそう・周辺グッズも無限に作れそうな世界観のキャッチーさと、それを下支える女児アニメ教養の豊かさは圧巻。現状シュールさがやや勝っているので、2クール、4クールと話を繋げられそうな要素があればより良かったと思います。
一人に一つだけ魔法が使える世界で、蒸気機関が発明された頃。主人公エリィはステップガールを職として一人で暮らしている。それはメイドを雇う余裕のない家庭が、玄関の掃除だけをさせてメイドがいる装いをするもの。見栄のための職業であるから、雇い主の交友関係を把握して笑顔をふりまく愛想に定評があるエリィ。その多数の人物のメモをもとに、事件や相談を解決していく。
選評「派手さはないが、万人に愛される」世界観設定とキャラクターが持ち味の作家さんで、本作品でもその魅力が遺憾なく発揮されています。シンプルなストーリーだからこそ、ターゲットにあわせてテイストをさまざま変えることもできそうです。スチームパンク風のヨーロッパ世界を舞台にした先行作品は数多ありますので、そこから頭一つ抜けるような工夫が欲しかったのが惜しいところです。
ミズホの中つ国には、シシト獣という霊獣がいる。空を駆り、不死の命をもつ神妙な獣は、生涯ただ一人の人間と縁を結ぶ。その際、シシト獣はひとつだけ願を掛け、人との縁が切れたときに、その願いは成就するという。人とシシト獣、彼らが競う国をあげての催事が「大騎行」だった。少女トワは、大火に見舞われた故郷を救うため、「大騎行」への参加を決意する。
選評壮大な中華風の世界に「大騎行」といういかにもアニメ映えしそうなモチーフが据えられており、「動いている絵を見てみたい!」と強く思わされます。同一世界観でのシリーズ展開も考えられ、IPポテンシャルの高さも評価されました。文章も読みやすく達者ですが、キャラクターの書き分けがもう一歩深まると、より良い作品になりそうです。
欠員が出たために6番小隊への配属が決まった コードネーム『アティピコ』は考えていた。自分は採掘拠点を確保するための『道具』にすぎない。それなら『道具』として役に立って死にたいけれど そのためには自分の性能をアピールする必要がある。あわよくば 優秀な『個体』として人々の記憶にとどまって死にたいと。そこで 支部長の目の前で拳銃自殺し、自分の異能の有用性をアピールすることにした。
選評会話文がリズミカルで、特異な設定にもすっと入っていけます。インパクトのある出来事もかわいいキャラクターが軽妙に語ることで何となく受け入れられてしまう、良い意味でWeb小説らしい作品です。作者が楽しんで書いているのが伝わってきて、この後2人にどういった試練が待ち受けているのか、続きが気になってしょうがないです。ぜひ連載を続けて、完結まで書ききってください。
人も少ない、何にもない。そんな辺境のド田舎「シンカイ」には、強烈な個性を持つ深海魚たちがひっそりと、したたかに暮らしていた!彼等は都会に憧れて無理して上京してみたり、出会いの少なさを嘆いたり、予期せぬ来訪者にドキドキワクワクしながら、彼らのドタバタな日常が幕を開ける!
選評マンガとしての表現技術が高い水準で安定しているところ、また、深海魚という題材への深い造詣と熱い愛情を感じ、高く評価しました。「一般的な人気や知名度とは無関係に、自分の関心が向かうものを深く突き詰めることが創作の源泉となり得る」と示してくれた作品です。惜しまれるのはストーリーの骨格がやや弱かったところ。先を読んでみたいと感じられる物語が欲しかったです。
魔族で奴隷のグリムは、貴族や雇い主のため日々働いていた。そんな時、同年代の少女マーガレットから食事を分けてもらい、二人は仲良くなる。それはグリムにとって初めての友人であった。数日後、グリムは薪拾いを命じられた森で迷ってしまう。案の定魔物に襲われそうになるが、間一髪というところで騎士に助けられる。その騎士の姿は代々魔族に言い伝えられているおとぎ話「白亜の王」と同じ、白髪に白い瞳を有した出で立ちだった。
選評モノローグやナレーションは多いものの、読みやすいコマ割りと構成で、素直に読者を作品に引き込む力を持っている作品です。何より、導入部の主人公グリムが夢から覚めるシーンや、マーガレットとの出会いによる心のやり取りの描写、そして間の取り方は秀逸です。マンガ自体は未完なものの、共感できるキャラクターは部門のテーマとして高評価に値すると思います。
血統や才能が実力に直結する「魔法」と、学べば誰もが使えるようになる「科学技術」。異なる2つの力を使いこなせる魔法使いはサイエンス=マジカと呼ばれる重役に就き、魔法界の発展や平和維持に貢献する。候補試験に合格した魔法使いのロベリアとセネシオは、サイエンス=マジカを目指して留学先の科学界で奮闘するが、ふたりに反科学派の魔の手が迫るのだった。
選評「魔法ファンタジーモノ」として押さえてほしいポイントをしっかりと押さえつつ、変化球も織り交ぜるところは見事だと感じました。キャラクター造形については作家性を残しながら、もう少し今っぽい雰囲気に振れると良いと思います。メガネの先生のルックがすごく好みです。
17世紀カリブ海のとある島。ブードゥーの呪い師見習いの少女ゾエは、嵐で漂着した海賊船の船員をゾンビとして使役にしようするが失敗し、ゾンビとなった海賊に捕らえられてしまう。ゾンビたちは町を襲って船を奪い再び海へ出ようと企むが、ゾエは若手海賊カーティスの船を引き渡すことで襲撃を逃れようとする。
選評「カリブの海賊」という王道なテーマに「ブードゥー」でややエッジを効かせながら、ポップで可愛くマンガに落とし込めており、非常に好感が持てます。キャラクター同士の掛け合いも心地よく、テンポ良く読める反面、序盤からもう少しドキドキさせるような展開が作れているとなお良いと感じました。キッズ部門としては申し分ない作品です。
時は現代。突如としてバブーウィルスによって全人類が心身ともに赤ちゃんに戻るバブー化現象が発生する。世界は機能を失い、オヤツを求めるバブーたちが街中で暴れまわっている。事態を重く見た大富豪・アリス嬢は正義の組織「バブー財団」を設立、天才科学者をヴァカ博士の開発した「バブースーツ」をまとった12人の赤子(十二子)を結成させ、パトロールに出す。
選評海外では非常にポピュラーな「赤ちゃんモノ」を日本的なテイストの「ヒーローモノ」として描けていて好印象です。人気声優勢ぞろいでアニメにしたら面白そうだなと感じました。ただし、キッズ感が強く出すぎており、広いターゲットが狙えるような一捻りがあると、より作品として魅力的になると思います。
分厚い暗雲の下、サーチライトによって浮かび上がる鋼鉄都市「メルトポリス」。そこはロボットだけの管理社会で、量産型の下級ロボットたちは支配階級ロボットからの命令で未開の地「ユースレス島」へ向かうことになった。ユースレス島に降り立った下級ロボットのピポポは、岩山の上で踊りながら歌う声の主 モモと出会う。
選評人間の女の子「モモ」も下級ロボットの「ピポポ」もとにかく可愛く、このバディは作品として純粋に見たいなと感じました。SFとしての良さもストーリーにしっかり反映されており、ストーリーとキャラクターのメリハリが効いていて全体の完成度が高いです。綺麗にまとまっているのですが、あともう少しSF的なエッジを効かせられると、より深みが増すと思いました。
姉を頼って青森から東京の高校へ進学した主人公・吾野珠音(あがのたまね)は、登校初日に助けてくれた謎の少女を探していた。たどり着いたのはクラブハウス「Club Torchlight」で、そこにDJとしてやってきた謎の少女・根岸悠希美と再会する。悠希美の魔法のようなDJプレイに心を動かされた珠音は、DJに興味を持つようになる。
選評「美少女」×「DJ」というありそうで無かった設定は「音楽モノ」としての新しさを感じると共に、DJになりたい人に向けたハウツー的な作品になりうる高いポテンシャルを感じます。作者自身がDJをやっているという事で適度なリアリティラインも保たれており、企画としての完成度も非常に高いです。DJをビジュアル的にどうカッコ良く魅力的に描けるかがアニメ原案としての課題だと思います。
将来の夢をもつことで「ジョブモン」を手に入れることができる世界。主人公・みゆきは将来の夢が決められず、ジョブモンをもつことができずにいたが、子どもたちからジョブモンを奪う怪盗ムーンローズとの遭遇をきかっけにジョブモン・ガーディアンを手に入れる。みゆきは奪われたジョブモンを取り返していくが、あるとき怪盗ムーンローズのリーダーが同級生・えりかだと知ってしまう。
選評「キッズ」としての王道感があり、審査員からも高い評価を得ました。「ジョブ(お仕事)」というモチーフをモンスターやアイテムなどにしっかりと落とし込めていて、画的なクオリティも非常に高く、商品展開含めたビジネス面でも魅力的です。一方で、2クール見せるための背骨の物語をどう設定するかには、まだ作りこみの余地があると思います。
人が作り出した"人間界"と建築物の世界"建築界"。今、「建築界」に危機が迫っている。建築カタストロフ、建築ハルマゲドンの到来に建物たちは怯え、封じ込められていた百鬼夜行な悪の建築物が復活し始めている。「このままでは危険だ!この国も、この町も、俺達の家も危ない!」ガントはジェイルと共に自宅をアーマードさせ、この町内の危機に立ち向かわなければならない。
選評「家」という、「電車」以上に日本人小学生なら誰でもよく知るものを直球でロボット化する大胆な企画です。震災を経験したキャラがいたり、最後を一人暮らしの小さな部屋で終わらせたりなど、子ども向けアニメとしての教育側面もしっかり盛り込んであります。第一弾から続けて応募いただいている作家さんですが、今作が最もポップに仕上がっていると思います。
魂の宿る音楽・ブルースの奏でる音色を「化身」として具現化できるアイテム「ブルースハート」の発見により、世界各地でブルースハートを用いたバトルが繰り広げられていた。主人公の少年は化身の力を増幅させる効果をもつブルースハート(ジャイアントハート)を手に入れたことでライバルや刺客に狙われるが、戦闘を通じて成長していた。ある日、ジャイアントハートを優勝賞品とする大会の案内状が届く。
選評「ブルースハープ」は手軽に始められて、種類が豊富で、学校にも持って行けて、いろいろな技が存在する楽器。この非常に強いキーアイテムをよく見つけてきたなと感心させられました。設定なども良かったのですが、一点突破感が強いのが正直なところ。いいモチーフなので、是非ストーリーとキャラクターへの落とし込みを意識してみてください!
鳥獣による農作物への被害が増加した少し未来の日本。狩猟の疑似体験スポーツ「ビーム・ハンティング」が爆発的な人気を獲得していた。小学部全国大会での優勝経験をもつ主人公 逆井アキは、強豪校である西東中学校のビーム・ハンティング部への入部を断り、他人に触れていないとパニックになる癖をもつ水川タキと、狩場で暴走する猟犬ユウヒとチームを組み、全国大会を目指す。
選評「欠点を持つもの同士が出会うことで、互いの欠けを補い合って最高のパートナーになる」というYAジャンルの王道ストーリーに、ハンティングという素材を掛け合わせたセンスが買われました。敵チーム側に魅力的なキャラクターをまだまだ増やせそうです。選考会ではビームハンティングだと風向きの影響などがなくなるが良いのか? という意見も出ました。競技のディティールは改良余地がありそうです。
13歳の女子中学生、灰田硝子は、あることをきっかけに男性アイドルグループ「プリンスオブプリンセス(通称プリセス)」の総合プロデューサーを務めることになる。メンバー全員がおとぎ話や神話に登場するプリンセスの子どもという設定……ではなく、異世界からやってきたプリンス。彼らの目的は世界中に飛び散っているという「全知の鏡」の破片を集めることだった。
選評全応募作品中、もっとも作者の熱意が高い企画書でした。臆面なく萌えと欲望をブチ込んだ企画コンセプトは素晴らしいの一言です。「全知の鏡」の設定にも楽しさがあり、やや飽和気味ともいえる「男性グループアイドル育成もの」の要素を外してもなお成立しそうという点で、ほかの女性向け作品とは一線を画しています。どうかそのままの熱量と感性を大事にして、創作を続けてください。
伝説のサーファーである祖父にあこがれる佐久間ヒカルは、泳げないにもかかわらず、周囲の説得を振り切ってサーフィンの練習に明け暮れていた。ある日発生した巨大波に子どもがさらわれそうになるのを目撃したヒカルは、祖父の形見であるショートボードを片手に海へ飛び込む。モンスターウェイブが襲いかかったその時、ヒカルの眠りし才能が覚醒し始める──。
選評2020年からオリンピック競技にもなるサーフィン。男女の別なく、親子で楽しめ、アニメ映えもしそうなモチーフを選んだ時点で、2020年代を代表する作品への素質は十分です。他方、本当にスポーツものとして王道でいいのか?アニメ的な外連味を加えた方がいいのでは?という点で意見が分かれました。リアリティラインについてはさらに練り上げていただきたいです。
日本のごく普通の町「はままつちょう」に暮らす普通の少年トシユキくんの元に、ある日「ファイ」と名乗る謎の少女が現れる。可愛くて天然ボケ、それでいてやけにお金に執着する少女は、実は遠く離れた「マネーマネー惑星」から出稼ぎにやってきた宇宙人なのだった!元手もプランもゼロの出稼ぎ宇宙人は、目標である100万円を貯めて故郷に帰ることができるのか──!?
選評「お金を稼ぐとはどういうことなのかを子どもに教える」というテーマに、キッズ部門としての意義を感じました。設定や世界観など完成度が高く、作者本人によるイラストも可愛らしく、画的な魅力もしっかり出せていると思います。ストーリーの深掘りに時間が掛けられれば、より化けそうな印象です。
世界を巻き込む大戦争が終結して数十年。一見平和になったかに見えた世界には、当時の戦争で使用された兵器「地雷」が数多く残存し、人々を苦しめていた。「地雷」はまるで異形の化け物のごとく、罪なき人々の体を容赦なくえぐり取っていく怪物。平和な世界に憧れを抱く主人公の少年・アディルは、一人前の地雷撤去班を目指して戦いに身を投じていく。
選評「地雷」がとにかく恐ろしい!敵の造形・設定としては発明レベルなのでは。地雷除去という世界的な問題をテーマとしている点で現代性も感じられます。設定、世界観はすごく良いので、後はもう少しストーリー・キャラクターに華を出せると良いと感じました。エンタメとしての昇華を期待します!
2020年春、10歳の少年・赤嶺エンがスピードキュービングの世界記録を打ち立てたことから、ルービックキューブのブームが再来するが、絵的な派手さに欠けるため「魅せる」競技が模索される。翌年に考案されたターン制のペアプレイにバトル要素を取り入れた「バトルキューブ」は、シンプルながらも戦略性が高く大ヒット。その2年後には世界大会の開催が決定する。
選評「ターン制のペアプレイ・ルービックキューブバトル」という発明だけでも、ゲーム部門として上々の出来です。世界展開もイメージでき、わくわくしました。一方で、第二弾のときにも選評にあった「キャラクターの弱さ」は本作でも引き続き課題として残りました。きっと、もっと、ベッタベタに愛されるキャラクターも、書ける方なはず。ブレーキを叩き壊したような作品を読んでみたいです。
主人公 蒼井花梨はギターが大好きで無口な中学一年生。仕事が忙しすぎるママの家を追い出され、離婚したパパの経営するド田舎のホテルに引っ越すが、パパは呪いでホテルに閉じ込められていた!パパの呪いを解く方法はただひとつ、花梨が人の心のケガレを音楽で祓う山神の巫女になること!花梨が魔法のピックを宙に投げると神の依り代に変身、そしてその腹からは光る神器(ギター)が現れる!
選評古き良きミュージカルの「ポップさ」、変身バトルの「エンタメ感」に「尖った作家性」が組み合わさったことで「唯一無二性」を獲得した、非常に素晴らしい内容だと思います。「音楽モノ」という側面もあり、さまざまな展開が期待できる作品として審査員からの評価も非常に高いです。これからも作家として尖り続けてもらいたいです。
まず全体の応募に関してなのですが、期待していた『子供達が世界を好きになる、早く大人になりたいと思わせる』作品は少なく、キッズ部門としては残念に感じました。
『メビウス・ダスト』はダークなストーリー展開となり「キッズ」ではないですが、家族の絆に焦点があてられていたり、腫枝(ラムス)と呼ばれる己の意思で自分の一部分が変形できる能力で熱いバトル展開も期待でき、破壊のあとに新しい息吹がもたらされるこの世界観は、「2020年代を代表するアニメーションを創造する」という本プロジェクトに合う作品だと感じました。
作者の方の「こんな作品を作りたかった」という熱い想いの中に、「こうあって欲しい」という願望もあるのではないかと個人的に感じられ、この作品に魅了されました。
そして、他の応募して下さった作品も様々な「ありそうでなかった」ワクワクするアイディアに溢れ、選考時に「どれもアニメ化したい……!」と、最後の最後まで各社審査員の意見が割れ、迷うほどの力作揃いでした。
作品からイメージしたいろんな妄想をどう形にして行き、アニメの文法に練り込んでいけるかがカギになると思いますので、スタッフ一同、精一杯頑張っていきたいと思います!
平松岳史氏(株式会社動画工房)